うみうみうみうみうみうみうみー。(さくら)
「第17話あらすじ」
臨海学校に来たさくらたち。その夜さくらは奈緒子の怪談に脅かされ、眠れずにバンガローの外を散歩する。そして、道中に会った小狼と海岸で話をする。翌日のきもだめしでは、さくらは洞窟に入った人が次々と消えるのを目撃する。駆けつけた小狼の言葉で恐慌状態を脱したさくらは、原因のクロウカードを封じた。それは、人や物を消す「消(イレイズ)」の仕業だった。
さくらちゃんが幽霊などよく分からないものが苦手なのは周知の通りですが(第6話参照)、奈緒子ちゃんから怖い話を聞かされたさくらちゃんは眠れずにバンガローの周りを散歩します。そして途中、小狼くんと出会い、夜の海へとやって来ます。夜の海というのはロマンチックな場所と相場が決まっているものですが、そこで二人は波打ち際で愛をささやく……はずがありません。
しかし、これまで彼女をライバルとしてしか見ていなかった小狼くんに心境の変化が訪れます。彼にとってさくらちゃんの存在は、クロウカードを集める途中でいきなり登場した頼りない少女でしかありませんでした。例えて言うなら、今まで出自も良く実力もあった俳優の二世の小狼くんが、ぽっと出の新人にカードキャプターという大役を奪われたような感覚でしょうか。しかも、その新人は演出家ならぬ、ケルベロスというクロウカードの守護者に認められています。
――本当なら、あの役は俺に与えられるべきだったんだ!
「カードキャプターさくら」と初めて会った時の、そんなもやもやした気持ちを抱えたまま、小狼くんもカードキャプターとして奮闘します。ですが、事務的な会話以外にはさくらちゃんとあまり話をする機会がなかったし、したいとも思わなかったのでしょう。そこにきてこの臨海学校。夜の海でカードキャプター以外の話をすることができました。相手の本当の姿を見ようと、お互いにほんの少し歩み寄ったのかも知れません。
――こいつ、もしかしたら意外に良い奴なのかも。
さくらちゃんに対して抱いていた、微妙な敵愾心をふっと緩めた小狼くん。きもだめしの洞窟の中、友人たちが次々と消える場面でも、自分は手を出さず、あのケルベロスが認めたさくらちゃんに任せてみようかと考えました。
仮に、もしもケロちゃんがきもだめしについて行ったら事態は変わります。皆がいなくなる中、ずっと手をつないでいた知世ちゃんまで消えてしまってパニック状態になったさくらちゃんに対して言います。
ケロ「さくら! 落ち着くんや! 橋の奥からクロウカードの気配がするで!」
ケロ「あれは……。「消」のカードや」
(涙ぐみながら)さくら「イレイズ?」
ケロ「せや。人や物を消してしまうカードや。やかましい音を立てたら気づかれるからな。静かに近づくんや!」
と、小狼くんのアドバイスと似たようなことを喋っていたでしょうね、きっと。そして、小狼くんの出番はなかったかもしれません。そう、小狼くんが果たした役割は、カードキャプターさくらに知恵を貸し、解決策を導くアドバイザー、ケルベロスそのものだったのです。そうしたシーンが見られたこと、そして、互いに話を交わすことができたことでも、二人の関係に転機が訪れた回だったと言えるでしょう。
使用カード:「浮(フロート)」
【2004年7月31日(土)放送分】
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